江青日誌

夢は野山を駆け巡る

2020/01/10に聞いた「日本にJoy,Incを創る!ぼくらのジョイインクジャーニー 3年間の軌跡」がいい話だったので、書き起こしてみた!#RSGT2020

 「書き起こしてみた」第2弾は、#RSGT2020で ご自身の会社の企業文化を変えてきた7年の軌跡を話してくださった、クリエーションラインの安田さん。ご本人の承認を頂き、自分の勉強のためにも書き起こしてみました。最後まで読んでいただくと、この話のすごさが身に染みてわかります。読んでくださった方のお役に立てると幸いです。

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初めに 

こんにちは
今日はですね「日本にJoy,Incを創る!ぼくらのジョイインクジャーニー 3年間の軌跡」というタイトルでお話しさせていただきます。クリエーションラインの安田と申します。よろしくお願いします(会場拍手)

自己紹介

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私は、2006年にクリエーションラインを創業して、社長という役割を担ってまいりました。先ほど、ふざけたスポンサーセッションをお聞かせしましたが、今回のRSGT2020では、ゴールドスポンサーとして、参加させていただいてます。現在、140名ほどのメンバーがいて、9割方エンジニアの集団です。事業内容は、アジャイル開発支援サービス業とサブスクリプション事業をやっている「まじめな」会社でございます(笑。

まず、最初に皆さんにお伺いしたいです。

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1つ目の質問は

「あなたは喜びに満ちた人生を送りたいですか?送りたい方挙手を!」

------------ほぼ100%ですね

「『Joy,Inc』を読んだよという方、挙手をお願いします」

------------ほぼ100%ですね(笑→見た目70%ぐらい

今日は講演時間が20分しかないので、『Joy,Inc』の本の内容に触れることができません。皆さん、読んでいらっしゃるという体で、話を進めていきます。ご了承ください。

まず、1つ目の質問に手を挙げていただいた方にお送りしたい一文を『Joy,Inc』から持ってまいりました。

あなたは喜びを選んだ、
それは困難な旅の始まりだと理解して欲しい
人間の行動を変えることが
最も困難な旅のひとつだ。
そして、おそらく、最も実り多いものだ。

-『Joy,Inc』第16章まとめ「喜びのなかへ」より

『Joy,Inc』に出会ってから3年なので、講演タイトルは「3年間の軌跡」としましたが、実は、7年間の改革の話です。この7年間は、困難な旅の話でもあり、実りの多いものでもありました。ここにいらっしゃる方の中で、チームを変えようとされている皆様がやろうとされている、会社の文化を変える孤独な挑戦に、勇気と元気がもたらせることがゴールとして話を進めていきたいと思います

本日のアジェンダ

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7年間を20分にまとめているので、もう少し詳しい話を聞きたい方は、ご依頼ください!本日の話はロングバージョンもありますので(会場から笑いが起こる)

『Joy,Inc』に出会う前の僕ら:最悪だった2013年

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『あなたのチームは、機能してますか?』有名な本ですね。読まれたことがある方も多いと思います。この本の中にある、これまた有名な「機能しないチームの」3角形の図。まさしく以前の僕らは、この機能しないチームでした。

いくつか事象を持ってきました。メンバー30人ぐらいで2013年の話です。本当に思い出したくない過去の話ではあるんですけれど、その時の状況を皆さんの正確に知っていただきたくて、お話しさせていただきます。

  • 社内全体が暗い。全体会議が一番暗い。なぜ、僕がここにいなければならないのかという空気がプンプン漂っている。
  • チーム間のコミュニケーションが全くない。いがみ合っている状態。
  • プロジェクトの大炎上中。恥ずかしい話なんですけれど、夜中の1時2時からミーティングが始まるようなときもありました。
  • 社員が会社の悪い噂をあることないことSNSに投稿する。

本当に最悪な状況でした。
負のスパイラルが回っている感じ
いろいろこの時悩みました。
会社たたんだ方がいいかとまで考えました。

その時を振り返ってみると、原因は自分にあって、だめなリーダー、だめな社長、だめな経営者の典型でした。
目先の売上や利益だけしか見ていなかった。
本質的なもの、大切なものが、全く見えれない状況でした。
ビジョンだとか理念がない状況でした。
そうなるとこういう状況に陥ってしまいます。
この時、私自身深く深く反省し、この状況を素直に受け入れました。ここから、開き直って、良くしていこう、カイゼンしていこう、そこから歩み始めました。

実際、会社の浮き沈みのグラフはこんな感じです

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2006年に会社ができて、ちょっと良くなって、2013年にどん底になります。そこから、いろいろな取り組みを通じて、少しづつ会社が良くなっていくという話になります

『Joy,Incとの出会い:2013~2017

2つ目に、2013年のどん底の時期から、『Joy,Inc』に出会うまでの話をしていきたいと思います
いろいろな取り組みをしてきましたので、すべて紹介しきれません。なので、象徴的なエピソードをいくつかご紹介します。

2015年1月:全社会議

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「人生をよりよくするために」「クリエーションラインでの仕事をより楽しくするにはどうしたらいいか?」を、みんなの前で呼びかけました。
まだ会社の雰囲気はよくない。「社長何言っちゃっているの?」という雰囲気がプンプン漂っている状況。
ただ、自分自身、なんとか会社を少しでも良くなるために、もがいていました。僕が必死になっていた姿を見て、少しずつ、会社の中にモチベーション高く活動するメンバーが出てきた時期でもありました。

2016年10月:ヴァル研究所見学

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ヴァル研究所さんに見学に行かせていただきました。皆さんのなかにも、ヴァル研究所さんに行かれた方もあると思いますが、本当に素晴らしい活動をされている会社さんですよね。私たちも、その場でいろんなことを学びました。これ以降、社内 全部ではないですけれども、付箋を使って可視化する、ふりかえりをするチームが出てきました。

2017年03月:「強いチームの作り方」ワークショップ

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アトラクタの吉羽さん、原田さんにご支援いただいて「強いチームの作り方」というワークショップを開催しました。この時、会社のメンバーは60人ぐらいだったのですが、全員がこのワークショップに参加し、強いチームとは良いチームになるにはどうしたらいいか学びました。すごく良いワークショップなので、吉羽さんにぜひご依頼ください(笑。
ワークショップ効果で、本当に社内のモチベーションが上がり、社内の有志のメンバーがカイゼンチームを自主的に作って、社内のいろいろな問題を解決をする活動がこれから始まりました。

2017年08月頃:『Joy,Inc』との出会い

吉羽さん、原田さんとの出会いがあって、お二人も翻訳を携わった『Joy,Inc』に出会ったのが、2017年の8月ごろになります。本当に素晴らしい内容で、読んでない人は絶対にお読みになることをお勧めします。

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で、本当に小学生みたいな感想なんですけど、「ほんとすごいな」「こんな会社があるのか?!」純粋にそう思いました。一方で、すごい会社、すごい話過ぎて、遠い世界の物語のように感じたのも覚えています。

RSGT2018:2018年1月

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その遠い世界の物語の主人公であるリッチーが来て、講演してくれる!これは行かねばと思い、参加したのがRSGT2018でした。RSGTは初参加で、講演は素晴らしいし、イベント自体とても素晴らしかった。リッチーの講演も心に響きました。

一番印象深かったのは、リッチーさんが、とてもうれしそうに、楽しそうに、ご自身の会社のことを話していたんですね。

その時に僕は思いました「僕は、こんなにうれしそうに楽しそうにクリエーションラインのことを話せるだろうか?語りたい!こんな風にリッチーのように語りたい!」と、強く強く思いました。

RSGT2018の翌週の全体会議でみんなの前で発表した資料がこちらです

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突然ではありますが、全体会議のやり方を大きく変えたいです。
理由としては、もっと楽しく仕事したいです。
やり方を変えましょう。変えさせてください。
まずは、お互いを知ることから始めたいです。

具体的には、全員で丸くなって、リレートーク

今自分が何をやっているのか、今週何をやるのか基本的なことからスタートさせてください。

いう提案をしました

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この時の活動を違う視点で見てみると「チームワークの7つの段階」というフレームワークがあります。ご存知の方も多いかもしれません。
私たちは、Level7「新しい価値を共に生み出す」チームになりたいわけですね
ですが、一足飛びにここに行くことはできません。一つ一つ積み上げていって、初めて到達することができるようになる。
ということで、全員で集まって自己紹介しお互いを知ることから、つまりLevel1から始めました。その時は、カイゼンチームが社内にありましたし、チームビルディングも行っておりましたので、モチベーション高い人やチームも当然ありました。会社全員で80人ぐらいの時期です。でも、「会社全体ではLevel1だよね」と改めて認めて、そこから再スタートしました。

僕らがカルチャーを変えるためにやっていること

これ以降、いろいろなことをやってきました。

Weekly 朝会

f:id:IWAKIRI:20200112120551j:plain先ほど「全体会議」と言ってましたが、それを様変わりさせて、「Weekly 朝会」としました。Weekly朝会は、毎週月曜日、朝10時から11時の1時間使って、チームビルディングを目的とした、全員参加イベントです。この中で行ったいろいろの活動の中から、いくつかご紹介させていただきますと

ふるふるレートーク

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「誰かをふるふるするほど褒める」というイベントで、ほんと、みんなモチベーションが上がるんです。ほめられると嬉しいじゃないですか。あと、誰かが誰かをほめているだけで、心が温かくなって全体の機運が上がっていく、これおすすめです!

リモートメンバーとのジェスチャーゲーム

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ワークショップは、どうしてもオンサイトが一番盛り上がりますよね。リモートメンバーとのギャップが生まれやすい。普段から、富山に拠点があったり、全国各地にいるリモートメンバーとのコミュニケーションをいかに円滑にしていくかという課題がありました。それをこのジェスチャーゲームの中で解決したいという思いがありました。

雑談

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2019年は「雑談」を多く取り入れました。きっかけは、RSGT2019のクロージングキーノートであります、ヤッホーブルーイングさん。彼らは毎日20分間雑談をしている。それをマネさせていただいて、僕らは毎週月曜日の朝30分間、雑談をしています。僕らのやり方は、4から5人の雑談のためのチームを作って、そこにリモートメンバーも入って、雑談をします。

雑談の効果は、いろいろあって、社内のアンケート結果からコメントを紹介すると

  • 雑談で得たつながりが、仕事のつながりになった。
  • 入社が浅い自分を快く受け入れてくれて、滑っても大丈夫な環境を提供してくれたおかげで、勇気をもらえました

つまり、雑談を重ねる中で、チーム間のつながりができり、いわゆる心理的安全性みたいなものが生まれてきているわけなんです。

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弊社では、エンゲージメントスコアを取ってまして、雑談をし始めてから、右型上がりになりました。

Weekly朝会、雑談については、この場で語りつくせないほどあります。絶対に語りつくせないと思うので、雑談をやるためノウハウはブログに上げました(笑。雑談をやるためのノウハウとか、便利なツールなど、全部まとめてありますので、ぜひ、参照いただければと思います。

クリエーションラインのWeekly朝会について
https://www.creationline.com/blog/tadahiro-yasuda/31129

RSGT2019にインスパイアされて雑談を全社で1年間やった結果得られたもの
https://www.creationline.com/blog/tadahiro-yasuda/31156

etc...

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僕らのジョイインクジャーニー未来編

これからやりたいことは、日本のいろいろな会社やチームに『ジョイ・インク』の素晴らしい文化、働き方(XP)を広めたいと思っています。

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クリエーションラインのビジョンは、「IT技術によるイノベーションにより顧客と共に社会の進化を実現する」ことと据えています。
僕たちが持っているITの技術、知識、ノウハウを使って、各産業の方々とコラボして、各産業固有の知識、ノウハウと融合させて、新たな価値を見出していこう。そして、社会を進化させるような製品だったり、サービスを創っていこうということをビジョンとして描いています。

その際にですね、この『Joy,Inc』から教えてもらった素晴らしい文化、働き方を、シェアしていきたいと思っています。

 

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一つの成功事例として、デンソーさんとの取り組みがあります。今、デンソーさんには出資を頂いていて、いろいろなプロジェクトを進めさせていただいています。
2018年から、弊社のある秋葉原のオフィスの1フロアを使って、デンソー、クリエーションライン、協力会社の人たちが20名ぐらいが集まって、開発をしています。
場所を作るにあたって、ジョイインクの思想を多分に取り入れて作りました。このプロジェクトでは、あるシステムを作っており、すでに大きな成果を上げております。それを受けて、他のプロジェクトもスタート。2号棟も2019年6月から稼働しています。

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このような取り組みを、デンソーさんだけではなく、各産業の方々と広げる取り組みをしています。

近日中に、皆様にその話もできるかと思っています。このように、先ほどお話ししたビジョンを少しづつ実現できてきている状況です。

Appendix1:会社の文化グラフ×業績

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一つ持ち帰っていただきたいものをご用意いたしました。先ほど見ていただいた「会社の文化ブラフ(私の主観)」に会社の業績(売上)を重ねてみたらこうなりました。売上データを重ねると、、、、右肩上がり!
どん底の時期に売上が停滞しています。会社の文化が良くなっていくに従い、売上が上がっていきました。利益も同じように成長していきました。
会社の文化が良くなると、チームとしてのパフォーマンスが良くなっていくわけですよね。チームとしてのパフォーマンスが良くなっていくと、良い結果が出てくる。成果が表れてくる。会社の売上・利益がついてくる。私たちは、業績を良くするために会社の文化を変えたわけではないのですが、結果的にそうなったということだと思います。

皆さんが、会社の文化を変えようと思ったときに、いろんな障壁、障害が出てくると思います。その時に、例えば「数字がすべて」という人もいらっしゃるかもしれません。その時に「雑談したい」といったときに、「雑談したい?雑談してどうするの?それで売上上がるの?利益上がるの?」と言われちゃうかもしれません。そういう人たちに、ぜひこのグラフをぶつけて頂きたい。
「クリエーションラインという会社があって、雑談したら、会社の文化が良くなって、売上上がって、利益上がって、みんなの給料が上がったらしいですよ」ということをぜひ言っていただきたい、です。

Appendix2:メンロー、に行ってきました!

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素晴らしい場所でした。ぜひ見ていただきたいです。素晴らしい文化が当たり前にありました。素晴らしい文化ってこうあるべきだなと思いました。僕たちもそうしたいと思いました。

今日は、皆さま方の前で、会社の文化について話をさせていただきました。このような話をするのは、僕自身、初めてなんですね。本当にうれしく思っています。リッチーのように、本当に楽しくうれしく話せたかどうかはわかりませんが、少しでも、皆さま方の力になれたのであれば非常にうれしく思っております。

明日から会社の文化を変える孤独な戦いに、勇気と元気がもたらされたのであれば、非常にうれしく思います。ご清聴ありがとうございました!

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撮影:滝川 陽一氏

講演後:質問/リッチーからのツイート/講演資料

Q「今の安田さんが、喜びを感じる時はどんな時ですか?」

ー 以前との比較にはなるのですが、以前は何故メンバーは会社の方針と違うことをするのか、、とか私の想いとは別の動きをするのか、、という不満を感じることがありました。他人のせいにしていたのです。
しかし、今では私自身のMindが変わったこと、私の想いを伝える機会が増えたこと、社内のメンバー同士のコミュニケーションが増えたことにより、そのような思いをすることがほぼなくなりました。

逆に「何故、みんな私の意図を汲み取って、動いてくれるのだろう?」と感じることが多くなりました。 そのような時に本当に会社を続けてきてよかったなー。喜びに満ちているなーと感じます。

 

 著者リチャード・シェリダン氏から賞賛のツイート!

 

講演資料

www.slideshare.net

原典

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

 
あなたのチームは、機能してますか?

あなたのチームは、機能してますか?

 

 更新履歴

1/13 7:27 ヴァル研さんの写真が間違っていたため差し替えしました

1/12 21:30 著者リチャード・シェリダン氏のツイートを追加しました