江青日誌

夢は野山を駆け巡る

「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読んで思ったこと

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾が病に倒れた。今も、復活したり倒れたり。私たちは、彼が病気と闘っていること、その上で表現者として活動したいと日々戦っている様を報道を通じて感じながら生きている。まるで、吉本隆明のように、スティーブ・ジョブスのように、死への時間と向き合っている一方で、表現者として魂が燃えている様を、否応なしに我々は見続けなければならない状況に置かれているのだ。本人ももどかしいだろうか、見守る方も苦しい。ましてやファンであればなおさらである。
でも、この本は、その苦しさを持って余りある彼本人の持つ明るさに満ちていた。小澤征爾の音楽にかけるパッションや、その小澤征爾小澤征爾ならしめてきた、様々な恩師や共演者との出会いを、村上春樹の筆によって読める幸福に浸った。
読み終わりたくない本だった。もっと続きが読みたいので、小澤征爾がもっともっと長生きしてくれることを望む。老いていくということはどういうことなのか、存在で教えてくれた吉本隆明のように、生きて生きてほしい。生き急がないでほしいと切に思った。