『わたしが外人だったころ (たくさんのふしぎ傑作集)』アメリカ✕日本
ハーバード大留学中に太平洋戦争が始まり、自分の周り誰一人日本が勝つと思っていない状況の中「負けた時に日本に居たい」と、自分の意思で日本に戻ってくることになった、哲学者、鶴見俊輔の実話を、佐々木マキのイラストでお届けするイキな絵本。
10代の男子の淡々とした声が聞こえそうなところがまたいい。1995年刊。
『KANO 1931 海の向こうの甲子園』台湾✕日本
台湾が日本領だった1931年に、嘉義農林学校が、日本人+漢人+高砂族の多国籍チームで、夏の甲子園で堂々2位になった実話が、台湾で漫画化。映画もあります。
日本では、弊社が刊行しています。感激して15冊買って、あちこちプレゼントしました。みんな口々に「こんなことがあったとはー」と驚きと感動を口にしてくれました。私のやっている私設図書館に置いても置いても返却されない本。もう、紙の本は在庫がなく、ぜひ、電書で読んでください。2014年刊。
『ゲッベルスと私──ナチ宣伝相秘書の独白』ドイツ
ナチスの国民啓蒙・宣伝大臣だったゲッペルスの秘書の一人の方が、103歳で応じたインタビューをもとに書かれた本。この本を読むまで、なぜ、ドイツがヒットラーをヒットラーたらしめるまで行ってしまったのか、史実としては理解していいても、腹落ちしていなかった。第1次世界大戦後ドイツのインフレの凄さ。「貧すれば鈍する」が国家にはびこっていくさまをじわじわと実感した本。2018年刊。
『動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』と『アニマル・ファーム (ちくま文庫)』
元ネタは、スターリン時代のソ連。国家はここまでも、人を騙し、搾取し、貪るのかを、寓話仕立てで書いている本。読書会で読むことになり、山形浩生訳を買いましたが、どんなホラーやサスペンスよりも怖すぎて、読み進むことができず、石森章太郎の漫画で読みました。1945年刊行。
著者のジョージ・オーウェルが、1943年から執筆にあたり、当時、ソ連をあからさまに批判する本を出すことを恐れた出版社が多く、発行するのにとても苦労とのこと。
今でこそスターリン時代やソ連型共産主義の闇は周知の事実ですが、1945年、ソ連のおかげでドイツや日本が無条件降伏したという声が殆どで、ソ連批判などできるような状況ではなかったようです。
どう怖いかは、ぜひ読んでください。他人事ではないです。国に騙されない自分であれという強いメッセージを感じました。
最後に
今回子のネタを書くにあたり、なんで私は、こんなにも、戦中にこだわっているのか、自問自答してみました。そもそもは、以下の4つの問いが心にありました・
- なぜ第2次世界対戦をしなければならなかったのか?
- 誰も止めなかったのか?
- 戦中、戦後、市井の人々は何を考えていたのか?
- なぜ、日本が侵略したことを、なかったことにしようと国はするのか?
そして、一番は「国から発せられる言葉をそのまま信じ、その言葉に酔い、疑いもせずに、周りにばらまく大人になりたくない」という強い恐れであると気が付きました。自分が、国からアイデンティティに関わる、譲れないほどのギリギリのラインを突きつけられた時、おもねらずに判断を下せるか、自信がないから、過去から、国が人を支配する時はどんな事が起こるのか、そして、その時彼らはどうしたのかを、知りたかったのだと。
最後に、Wikipediaの鶴見俊輔のエピソードを貼ります。
漫画の中では山上たつひこの『がきデカ』を高く評価し、「あの『がきデカ』というのがみんなに読まれているうちは、ああ、日本人にはこういう人がいるんだな、日本ってこんなんだなという自画像をもっているうちは、まだまだ安全だと思っているんですよ。「正義のために戦え」とか、「聖戦」とかいうふうにして戦争の態勢をつくるところまでにはまだ一歩あるなという感じがするのです」「こういうふうに金とセックスだけを追い求める人間が活躍するわけでしょう。ああ、日本人はこうなんだな、こういう人間がたくさんいるんだなと思って大人になることがいいんです。日本人は神の子で、万邦無比の国体なんだと思って海外に出ていったら困るんですよ。『がきデカ』を読んでいれば、ちがった人間になるんじゃないかという希望をもっています」と述べている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B6%B4%E8%A6%8B%E4%BF%8A%E8%BC%94