江青日誌

夢は野山を駆け巡る

エミリー・ウングワレー展に行く


大学時代の友人が、東京に出てくるので会わないかと連絡をもらいました。我々は美学美術史学科専攻。大学時代はそれこそ、絵を見る事が最大の勉強だったため、あっちこっち、電車に乗っていろいろな作品を一緒に見に行った仲。それならば、是非、東京に住む人間で絵を見に行きたいと思って、プチ同窓会を企画しました。幹事の特権は、自分で展覧会を勝手に決められる事(笑。日曜美術館で見て、気になっていた、アポリジが生んだ画家、エミリー・ウングワレー展に決定!
場所は、国立新美術館。のりとしては、東京都立美術館のでっかい版みたいな感じでしょうか?自分達で収蔵品を持たず「エミリー・ウングワレー展」や「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密」という学芸員自らの企画展のある横で、「毎日書道展」みたいな公募展が併催されていく運営スタイル。初めて足を踏み入れましたけど、ゆったりとした作りの素敵な空間で、日本って豊かな国なんだなあと思いました。ちなみに、黒川紀章氏と日本設計の共同体による設計で、東京大学生産技術研究所の跡地に2007年にたてられた新品の美術館。
エミリー・ウングワレー(1910頃-1996)は、アポリジ二として生まれ、アポリジにとしての尊厳を失われた生活を余儀なくされた後、国の政策の変更で、人生の途中からバティットの絵付け作家として筆を執りはじめ、その後、80歳からキャンパスに絵を描きはじめたという人です。美術館の案内によると「アボリジニ独自の世界観を背景に、美しく自由で革新的な作品を生み出しました。西洋美術の歴史とはまったく無縁な環境にありながら、その作品は抽象表現主義にも通じる極めてモダンなものとして、世界的に高い評価を得ています。」とのこと。なんというか、西洋芸術を見慣れた人からすると、彼女の絵の特異性にびっくりすると思います。西洋の絵は、縦横はもちろん、どこから見てほしいか、決まっています。彼女の絵は、生地のように、どこから見ても良い、つまり、上とか下とか、どういう風味に見るべきか決まっていない絵なので、展示会で並んでいる絵が、図版では上下逆ということもありました。その並べ方は、キュレイターに任せるということになっているんだそうです。

アポリジ二と言うと、アニミズム系アートをついつい連想しがちですが、きっと、これが、彼女のバックグラウンドの紹介なしに見たとしたら、どうでしょう?きっと、最先端の抽象画の展示会だと思うと思うのです。また、抽象画というと、どちらかというと、見る側に排他的で、理屈が先に立ったような、わりと暗い感じの絵が多く感じるジャンルの中、彼女の絵からは、色が奏でるシャワーの中で、明るくて無の空間にいるような気分になりました。ここから何かがはじまっていくような、静かだけと楽しい感じや豊かさを感じました。一方で、時系列に並べられている彼女の絵を見て、どんどん、年を経る事に洗練されていくのも感じました。80歳から始めたのに!おそるべし、エミリー!久しぶりの未知との体験。うまく言えないです(苦笑
エミリー・ウングワレー展は、7.28まで。もし、乃木坂に行く用事がある方は、時間をやりくりして、見に行かれたらいかがでしょうか?