江青日誌

夢は野山を駆け巡る

「さんてつ」を読んで初めて三陸鉄道の再開の意義を理解した。

さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 (バンチコミックス)

さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 (バンチコミックス)

私は岩手県釜石市の生まれなのですが、三鉄には2回しかたぶん乗ったことがありません。震災後、三鉄の復活に100億以上のお金が必要との報道に、地元の人間ながら、冷ややかな気持ちで沈黙していました。3/10に釜石に戻り、リスタートした桑畑書店で1冊何か本を買おうと思って、店長さんにすすめられ、この本を買いました。帰りの新幹線の中、涙が止りませんでした。震災直後の対応のきめ細やかさ。何よりも、震災後5日で一部運転再開し、1週間無料で地元の人に希望の光をともした三鉄の企業としての品格にしびれました。「バスで良い」と思いがちだけど、バスなだめな理由を語る大学教授の言葉で、やっと三鉄を復旧させる意味が分かりました。
北リアス線南リアス線の間には、宮古から釜石間を走るJR山田線があります。ここはまだ、JR東日本から復旧計画が出ていません。というか、JR東日本的には、山田線どころではないのでしょう。この際、三鉄に入ってもらって三陸をカバーする鉄道になってほしいものだと、本を読み終えて思いました。未曾有の逆境の中でアイディアを出し、存続に向けてがんばっている三鉄ならば、全線開業しても赤字を出さない経営を目指せるのではないかと思った次第。がんばれ!三鉄!応援したいと思います!

「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読んで思ったこと

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾が病に倒れた。今も、復活したり倒れたり。私たちは、彼が病気と闘っていること、その上で表現者として活動したいと日々戦っている様を報道を通じて感じながら生きている。まるで、吉本隆明のように、スティーブ・ジョブスのように、死への時間と向き合っている一方で、表現者として魂が燃えている様を、否応なしに我々は見続けなければならない状況に置かれているのだ。本人ももどかしいだろうか、見守る方も苦しい。ましてやファンであればなおさらである。
でも、この本は、その苦しさを持って余りある彼本人の持つ明るさに満ちていた。小澤征爾の音楽にかけるパッションや、その小澤征爾小澤征爾ならしめてきた、様々な恩師や共演者との出会いを、村上春樹の筆によって読める幸福に浸った。
読み終わりたくない本だった。もっと続きが読みたいので、小澤征爾がもっともっと長生きしてくれることを望む。老いていくということはどういうことなのか、存在で教えてくれた吉本隆明のように、生きて生きてほしい。生き急がないでほしいと切に思った。